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【休憩時間】
2回目の休憩時間は、まっすぐ1階に降りてワインを飲みました。赤ワインを頼んだところ、値段が高いわりに、味は今ひとつでした。ワインはやはり、酒屋の強みでサントリーホールがおいしいと思います。 さて、ワインを飲んでいると、近くの人たちの会話が聞こえてきました。30歳ぐらいの男性いわく「そうそう。あそこでつい、荒川静香のイナバウアーが浮かんじゃって」 同行者(2人ぐらい)「わかるわかる(笑)」 わかりません~(涙)。「あそこ」がどこを指すかは、残念ながら聞き取れませんでしたが、話の流れからいって、第1幕または第2幕ですでに見た(聴いた)シーンのことを言っているわけですよね。でも、荒川選手がイナバウアーを見せたのは演技の後半、曲が「誰も寝てはならぬ」に変わってから。彼女のイナバウアーが思い浮かぶような曲は、まだ聴いてないんですけど。あの人たちはフィギュアファンだったのか、オペラファンだったのか、あるいはどちらでもなかったのか、謎です。 でもまあ、ただいまの日本は、「トゥーランドット」→「誰も寝てはならぬ」→「荒川静香」→「イナバウアー」というような会話が、オペラの休憩時間に交わされるような状況なわけですね。誰も知らぬ者はおらぬ。そんな感じです。その勢いのまま、いよいよ第3幕に突入です。第3幕は、始まってすぐに「誰も寝てはならぬ」が歌われます。 各種DVDで「誰も寝てはならぬ」のシーンを改めて見るにつけ、このときのNHKホールの反応はすごかったです。 【第3幕】 ↓続きはMoreをクリック というわけで、いよいよ第3幕です。う~ん、どんなふうに書きましょう。歌のうまさを文章にするのも難しいですけど、会場のようすを臨場感たっぷりに伝えるというのも、それに劣らず難しいことですね。 今になって思うと、あのときは会場全体が「誰も寝てはならぬ」を待ちわび、この上なく期待が高まっていたわけですが、アルベルト・クピートの歌は、その期待に十分応えるものだったと思います。うまかったですよ。もちろんこの歌に至るまでもうまかったですけど、たぶん、日本における「誰も寝てはならぬ」の人気がわかっていて、あの場面では特に気合を入れて歌ったのでは。よく声が出ていて、オペラを生で聴く醍醐味を味わわせてくれる歌い方でした。ビッグネームではないにしても、十分なキャリアと実力をもった歌手なのだろうと思いました。 「誰も寝てはならぬ」という歌は、オペラの構成上、なかなかビミョーな位置づけの歌ですよね。第3幕が始まってすぐに歌われるため、物語の展開の中で、感極まって歌うアリアという感じではありません。歌詞の内容にしても、「夜明けに私は勝つだろう」といいつつ、それを邪魔するような合唱が入るし、勝利宣言じゃなくて、夜明けまでの落ち着かない気分を振り払うために歌っている、という感じです。内容的にどうもすっきりしなくて、この歌が終わったら盛大に拍手してください、というふうではないんですよね。実際、曲が終わるとすぐに、3人の大臣ピン、ポン、パンが登場して、別の歌に切り替わってしまいます。ですので、「誰も寝てはならぬ」を歌い終えても、拍手なしで別のシーンに移ってしまうことも少なくないようです。確認したら、紫禁城公演、ザルツブルグ音楽祭のDVDは、どちらも拍手なしでした。 メトロポリタン歌劇場のDVDは、カラフ役がドミンゴなので、さすがに拍手が起きていました。でも、NHKホールでのクピートは、ドミンゴの比じゃなかったですよ。なんと、ドミンゴの2倍、拍手を受けていました。すげえ。2倍というのは、こういうことです。「誰も寝てはならぬ」は、歌手が歌い終えてもしばらく演奏(後奏)が続くのですが、NHKホールでは、クピートの歌が終わってすぐに拍手が起きました。つまり、拍手と後奏がかぶっちゃってる状態です。フライング気味ではありますが、メトロポリタン歌劇場のDVDでも、拍手と後奏が重なっていました(こちら)。聴くほうの気持ちとしては、やはり歌が終わってすぐに拍手したくなるんでしょうね。 ただ、メトロポリタン歌劇場の場合、拍手と後奏が重なってはいるものの、後奏が終わるとすぐに別の曲に切り替り、それを機に拍手がピタリとやみます。しかーし、NHKホールでは、後奏が終わった時点で新たな拍手が起き、メータもしばらく演奏を止めたので、拍手がさらに続いたのでした。だから、クピートの受けた拍手はドミンゴの2倍です(2.5倍かも?)。 たぶん、歌手にも指揮者にも、「誰も寝てはならぬ」の人気が伝えられていたんでしょう。うわ。ちょっと恥ずかしいような気もしますが、まあたまには、こういうお祭り騒ぎ的なできごともあっていいのでは。 さて、「誰も寝てはならぬ」は終わりましたが、第3幕はまだまだ続きます。 次の見せ場は、この写真(→)のシーンですね。カラフの名を白状するよう迫られたリューが、彼の秘密を守るために自害するシーン(くわしくは第3幕のあらすじ参照)。リュー役ノラ・アンセルムは好演していたし、歌もよかったと思います。 この場面で、私はまたもオペラグラスを覗き、カラフがどんな表情をしているかを確認してしまいました。気になるんですもん。でも、化粧が濃くて、やはり表情はわからなかったです。リューが「氷のような姫君の心も」を歌っている間は、役人に腕をつかまれた状態で、舞台の袖のほうに立っていました。リューを心配しているんだか、していないんだか、演技の面でもよくわかりません。もっとも、リューが歌っているのに、カラフが目立つ演技をするのも、歌の邪魔になりそうだし。こういうふうに、大勢が集まっている中で1人だけが歌う場合、ほかの人物がどう演技するかはなかなか難しそうです。 ただ、ふだんDVDでオペラを見ていると、こういう場面は歌っている人がアップになりがちで、舞台全体を見渡せるチャンスがなかなかありません。その点、生だと小さいなりに全体が見られるので、そこが楽しみでもあります。 このあと、リューの遺体が運び出され、カラフとトゥーランドットが2人きりになるわけですが、この場面はトゥーランドットが車椅子であることが気になりました。それほど演技が必要なシーンではないにしても、カラフが立っているのに、トゥーランドットがすわっているというのは、ちょっとね。 そして、いよいよフィナーレです。これでもかというぐらい華やかで、大団円にふさわしい盛り上がり方でした(この動画でも見られます。4:25~5:24)。いやあ、堪能しました。拍手、拍手。楽しかった~。 続くカーテンコールも華やかで、場所柄、まるで紅白歌合戦のフィナーレのようでした。リューとカラフに対する拍手が、特に大きかったように思います。
by noma-igarashi
| 2006-09-25 23:40
| オペラ・音楽
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Comments(4)
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by
りんご
at 2006-09-30 03:03
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こんばんは、お久しぶりです。
フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」の案内が来た時、すごく迷ったんですよね。 『旬』の演目だし、演出はチャン・イーモウだし。 迷って迷って・・・諦めたので、noma-igarashi さんのレポがすごくうれしかったです! 素敵な公演だったようで、良かったですね。 私も楽しませていただきました!
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りんごさん、こんにちは!
「トゥーランドット」レポート、楽しんでいただけたようでしたらウレシイです。 私の場合は、確か1年ぐらい前に、NBSのニューズレターか何かで公演があることを知り、即座に「行きたい!」と思って、予約受付が始まるのを待っていました。私の利用できる先行予約がスタートしたのが、ちょうどトリノ五輪が始まる頃だったような記憶が…。その時点では、まさかこんなにも「トゥーランドット」人気が高まろうとは思ってもいませんでした。今年はモーツァルトイヤーのはずなのに、日本だけはプッチーニイヤーのようですね。
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by
りんご
at 2006-09-30 11:11
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>日本だけはプッチーニイヤー
ほんと、その通りですよね(笑) 私はアマチュアオーケストラで活動しているんですけど、春の演奏会ではプッチーニのオペラを数曲やりましたよ。 (歌手の方が女性だったので『誰も寝てはならぬ』はやりませんでしが。残念!) ほかのオーケストラを見ても、プログラムにプッチーニのアリアを入れるところが結構目立ったような気がします。 まずはお客様に喜んでいただくのが一番ですからね(^^) 秋の演奏会ではようやくモーツァルトイヤーです。楽しみ。
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by
NOMA-IGA
at 2006-10-01 11:02
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りんごさんは楽器をなさるのですね。いいなあ。
わが身を振り返ると、楽器はできないし、歌も歌えないし、スケートだって滑れないし、たまに情けなくなってしまいます。(^^;;; 私も、11月末にやっとモーツァルトイヤーらしく、「後宮からの逃走」を見に行く予定です。
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