111.31KV620日記 |
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「この人がこんな役もあんな役も」シリーズ、今回はフランシスコ・アライサです。実は昨日、これを書くために下調べをしていて、予想外にいろいろと考えさせられました。何について考えさせられたかというと、いきなりですが、自分の人生なんてものについて(汗)。むうう。ただの王子だと思っていたのに、フランシスコ・アライサ、あなどれません。
きわめて個人的なことなので、考えさせられた内容についてまでふれるかどうかはわからないですけど、ともかくは始めてみます(例によって数日かかる予定)。手持ちのDVDでは、バイエルン国立歌劇場とメトロポリタン歌劇場の「魔笛」でともに王子のタミーノを、ミラノ・スカラ座の「ドン・ジョヴァンニ」でドン・オッターヴィオを演じています。 フランシスコ・アライサ/Francisco Araiza テノール、1950年メキシコ生まれ 公式サイト 魔笛(バイエルン国立歌劇場) 収録:1983年、バイエルン国立歌劇場 指揮:ヴォルフガング・サヴァリッシュ 演奏:バイエルン国立歌劇場管弦楽団 タミーノ:フランシスコ・アライサ パパゲーノ:ヴォルフガング・ブレンデル 夜の女王:エディタ・グルベローヴァ 魔笛(メトロポリタン歌劇場) 収録:1991年11月、メトロポリタン歌劇場 指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演奏:メトロポリタン歌劇場管弦楽団 タミーノ:フランシスコ・アライサ パパゲーノ:マンフレート・ヘム 夜の女王:ルチアーナ・セッラ 動画:夜の女王のアリア ※アライサは歌いませんが、王子姿をご覧いただけます グルベローヴァを取り上げたときに、「夜の女王といえばグルベローヴァ」と書きましたけど、それにならえば、「タミーノといえばアライサ」といっていいのでは。少なくとも私の中ではそうです。最初に見た「魔笛」のDVDがバイエルン国立歌劇場のもので、おまけに、2番目に見たのがメトロポリタン歌劇場のものだったので。 タミーノという役柄は、第2幕ではだいぶ性格が変わっちゃいますが、第1幕では王子でありながら、けっこうとぼけたところがありますよね。迷子にでもなったのか、なぜかお供も連れずに山の中を歩いていたり、大蛇に襲われて、戦う前にあっけなく気絶したり、そのくせパミーナが悪者にさらわれたと知ると、騎士道精神に燃えたり。白馬に乗った王子様というより、頼りないけど育ちのいい若者、という感じ。アライサの演じるタミーノは、そういう味わいがよく出ていると思います。 バイエルン盤かメトロポリタン盤かとなると、バイエルンのときのほうが若い分(33歳)、王子らしくていいかな。ただ、メトロポリタンの赤と緑の衣装も、アライサの明るい風貌にはよく合っていると思います。 --------------------------------------------------- ドン・ジョヴァンニ 収録:1987年、ミラノ・スカラ座 指揮:リッカルド・ムーティ 演奏:ミラノ・スカラ座管弦楽団 ドン・ジョヴァンニ:トーマス・アレン ドンナ・アンナ:エディタ・グルベローヴァ ドン・オッターヴィオ:フランシスコ・アライサ この「ドン・ジョヴァンニ」は、グルベローヴァのときに取り上げたのと同じ盤。つまり、グルベローヴァがドンナ・アンナで、アライサがドン・オッターヴィオです。 ただ、1回目に見たとき、アライサだとは全然気がつきませんでした(汗)。もともとそんなに熱心に見ていない盤だったので、グルベローヴァのことを書いたときに(つまり先週)、出演者の名前を見てやっと気がついたような次第。「え、うそ! 出てたっけ」と、あわてて見直してしまいました。全体に舞台が暗いことに加えて、大きな帽子をかぶっているので、顔が見えにくかったようです。それに、ドン・オッターヴィオにはあまり興味がないので、まじまじと見ることもなかったし。 このときのドン・オッターヴィオ役については、たまたま『マエストロに乾杯』(石戸谷結子、光文社知恵の森文庫)というインタビュー集を見ていたら、アライサ自身がコメントしていました。以下に引用してしまいます。「 」内がアライサの言葉です。 ――スカラ座でのライヴ盤『ドン・ジョヴァンニ』では、ドン・オッターヴィオをお歌いでしたね。 「ああ、あれはちょっと、ひどいでしょう。ドン・オッターヴィオについて、何のアイデアもなかった。あれが問題だった……」 ――でも、たいていドン・オッターヴィオは、あまりアイデアのある人物には描かれていませんよね。 「ドン・オッターヴィオは、ある意味でドン・ジョヴァンニに対抗できる人物なんです。政治家になりたいと努力している人です。だからドンナ・アンナに対する関心もその手段なんです。彼女を愛してはいるけれどもね。アンナがドン・ジョヴァンニと関係がある、というようなことを言っても、驚きはするけれど、そのままアンナの恋人である方が政治的に有利であると、そう思っている。だから、アンナが一年待ってくれといっても、いいですよ、一年待ちましょう、と」 ――なーるほど(と感心してしまう)。どうも、あの一年というのが、理解できなかったんですが、なるほどそう言われてみれば。 「一年待つぐらいはかまいません。ドン・オッターヴィオは野心家なんですから」 ――それは画期的な解釈のような気がしますね。ドン・オッターヴィオは、いままで、ボーっとした人のよい人物かと思っていましたが。 どうもこのやり取りは、アンナが1年待ってくれというのと、オッターヴィオがそれを了解する(1年待とうと答える)のとが、途中でごっちゃになっているのではないかと思われますが、それはともかく。アライサの言葉を借りれば、このときの演技には「アイデアがなかった」ため、絵に描いたようなドン・オッターヴィオぶりが楽しめます。つまり、とても礼儀正しく、表面的で、感情の機微がわからない人、みたいな。これはこれで、いかにもドン・オッターヴィオっぽくていいのでは。少なくとも、私は見ていて楽しかったです。 --------------------------------------------------- さて、アライサの出ている手持ちのDVDは、これですべてなんですが、こんなに王子役ばかりやっているような人は、年を取ったらどうするんだろう、というのが気になりまして(すでに56歳だし)。そういえば、前に読んだインタビュー集にアライサも収録されていたっけ、そこに何か書いてなかったかなと、前述『マエストロに乾杯』を本棚から引っ張り出してきたのでした。 インタビューが行われたのは1988年11月なので、ちょっと古いですが、文庫が出た段階(2004年7月)で、最新ニュースが補足されていました。それによると…。 ――では最後に、今後はどういう方向に進まれるおつもりでしょうか。(略) 「(略)あと、やりたいものでは、ドン・カルロ、マンリーコ(『トロヴァトーレ』)、ローエングリン、ヴァルター・フォン・シュトルツィング(『ニュルンベルクのマイスタージンガー』)そしてローゲ(『ニーベルングの指環』)です」 ――ワーグナーのキャラクターも! それにローゲとは! 不思議なキャラクターですよね。アライサさんがねえ。 「とてもおもしろそうでしょう? 表現が特殊だし、高音程の声を要求されるので。でもいままでいろんなことに挑戦してきましたから」 ――ワーグナーは大変楽しみにしております。新しい解釈のワーグナー作品のキャラクターが期待できそうですから。アライサさんの進んでいく道を、固唾をのんで見守っている、というところです。 文庫版・注 アライサにはこの後、二度ほどインタビューしている。九四年のときには、とても興味深い話をきいた。彼は若い頃、「ローエングリン」を聴いて歌手になりたいと思ったという。「だから、歌手になった最終目標は、<ローエングリン>を舞台で歌うこと。この役をやったとき、やっと目的を達したと思いました」という。(略)念願だった『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のヴァルター、『ラインの黄金』のローゲ役も歌った。(略) …というわけで、ローエングリンもローゲも、すでに歌ったようです。ローエングリンは、「ラテンなアライサの顔でローエングリンを?」とは思うものの、王子さま路線には違いないから、まあ、アリなんでしょうかね(公式サイトで映像が見られました。うう~む…)。 ただ、『ラインの黄金』のローゲには意表を突かれました。ローゲですか。アライサが。へええええ。しかも、話半分の希望ではなくて、もう演じてしまったんですね。舞台写真を見つけてきたところ、かなり現代的な演出だったようで、アライサはスーツ姿。印象としては、ワンマンなボス(ヴォータン)に振り回される生真面目な金融マン(ローゲ)という感じですが。まあ何にしても、ローゲはローゲなわけで、「タミーノがローゲになっちゃうかね」と、かなり驚きました。まさに「この人がこんな役もあんな役も」だなあ…。調べてみるものですね。
by noma-igarashi
| 2006-06-21 00:30
| オペラ・音楽
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Comments(8)
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nazohiko at 2006-06-19 20:27
アライサはロッシーニの「シンデレラ」などでも王子様をやってます。
とにかく王子キャラ (^^)
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NOMA-IGA
at 2006-06-19 20:34
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「シンデレラ」、TVで見ました。
この人、ここでも王子やってるよ~と思いましたですよ。(^^) ただ、また後で書きますけど、下調べに本を読んでいたら、 数年前に「ラインの黄金」でローゲを歌ったんだそうで、 ちょっとびっくりしてしまいました。
アライサがローゲというのは、ウルトラ級に意外でしたが、
しかし「20年後のタミーノ」だと思えば、案外に納得できてしまいます。 ザラストロの配下になったタミーノは、幻滅と屈折を経て、 ローゲみたいな位置を、あの寺院の中で占めるようになるのかも。 むろん、ザラストロの未来はヴォータン様です (^^;
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NOMA-IGA
at 2006-06-22 21:50
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あはは。確かに「ローゲ=20年後のタミーノ」というのは、ありそうですね。タミーノってば、「魔笛」の第1幕では楽しい王子だったのに、根が素直なものだから、あっという間にザラストロに洗脳されちゃって。
それにしても、物知りの謎彦さんを「ウルトラ級」に驚かせることができたとは、アイデアをいただいて、このシリーズを始めた甲斐がありました。
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nazohiko at 2006-06-24 16:11
ウルトラQでした。
ゲーテを初めとして、魔笛の続篇を作った人は多いのですが、 「真面目な19世紀」のロマンティストたちは、 タミーノ夫妻が更なる修行や試練を経て、ついに昇天してゆくだとか、 ザラストロの世界を「善」や「正義」と信じて疑わなかったようです。 ザラストロって、うさんくさいと思うんですけどねえ (^^;
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NOMA-IGA
at 2006-06-24 17:05
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個人的には、「魔笛」は続編よりも、第2幕で善悪が逆転しなかった場合はどんな展開になるかという、別バージョンを見てみたい気がします。案外ありきたりでつまらない可能性もありますけどね。
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endegut-allesgu
at 2006-07-24 16:28
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ところで、先週アライサが詩人の恋をチロル音楽祭で歌いました。とてもよかったですよ。テンポなど個性的だなあ、って思うところもありましたが、説得力のある演奏でした。
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NOMA-IGA
at 2006-07-24 19:54
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