111.31KV620日記


オペラ、フィギュアを中心に、そのとき興味のあることがらを話題にしています。
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題詠blog2015参加作品(五十嵐きよみ)

無事に100首を詠み終えたので、投稿歌を以下にまとめました。
今年の題詠は、本をテーマに詠みました。
具体的に対象とした本がある場合は、書名がわかるよう、題名からリンクを張りました。

 *

001:呼 図書館の書架の片隅ひっそりと私を呼んでいる本がある

002:急 最終便は大幅遅延 五年経て『深夜特急』全巻そろう

003:要 子どもから少女に移りゆく時期に必要とした詩集一冊

004:栄 出だししか読んでないのに見栄を張りさもそれらしく話題に混じる

005:中心 小気味よく好きと嫌いに分ける自己中心的な書きぶりがいい

006:婦 文庫本カバーに貴婦人然とした黒いドレスのホリーの写真

007:度 人が皆、素直な態度を取れるなら小説なんかきっといらない

008:ジャム 香水やワインやジャムを小道具に語られてゆく恋の駆け引き

009:異 価値観の異なる人が同じ本を好きだと知ってしばし戸惑う

010:玉 善玉も悪玉もみな生き生きと描き出される大デュマの手で

011:怪 十代でどこまで「世界の名作」を味わえたかとなると怪しい

012:おろか ミカエラはおろか闘牛士でさえもほとんど出てこぬメリメの原作

013:刊 新刊が出れば必ず買うようなシリーズがある時期の楽しさ

014:込 三行でたちまち世界に引き込まれ恐竜たちと夜通し過ごす

015:衛 前衛も今では昭和のなつかしさ安部公房の埃を払う

016:荒 じわじわと読み手の心を荒ませて女流作家は薄笑いする

017:画面 Kindleの画面が本に似ていても古書のにおいは紙だけのもの

018:救 古書店の外に置かれた「100円」の箱から三島を救い出したり

019:靴 懐かしい友のひとりに数えたい長靴下のピッピのことも

020:亜 ヒロインも作者も桜井亜美という本として『イノセントワールド』

021:小 本棚の奥の一冊手に取れば黄ばんだ文庫の文字の小ささ

022:砕 末っ子は気ままな習いこまごまと心を砕く長女をよそに

023:柱 鉄塔も電柱もあの事故のあと素直に親しめなくなっている

024:真 写真家の視線鋭くこの街の宿す狂気を切り取ってゆく

025:さらさら 鮮やかなどんでん返しさらさらとしていた心がざらざらになる

026:湿 行間に雨季の湿りを嗅ぎながら読みゆく『マレー蘭印紀行』

027:ダウン やせ我慢してでもフィリップ・マーロウはダウンコートを着てはいけない

028:改 改めて読み直したい 前文と第九条の「戦争放棄」

029:尺 教室に同じ尺度を持つ人が誰もいなくて息苦しくて

030:物 読みながらドラマでなじんだ物言いをつい活字にも重ねてしまう

031:認 ライターが選手と互いに認め合う関係だったと伝わってくる

032:昏 たましいは昏き小函に仕舞われてただうっとりと夢見るばかり


033:逸
 ふらふらと話題の逸れる書きぶりがいかにもコミさんらしい味わい

034:前 自転車の速度を上げるエビアンと『宙の名前』をリュックに詰めて

035:液 乳液は安物でいい穏やかに目覚めのんびり暮らせればいい

036:バス オムニバスで人間模様が描かれる阪急電車ひと駅ごとに

037:療 正面から作家は綴るみずからの白血病の治療の日々を

038:読 愛読の定義がどうもわからない「好きな本」なら迷わないのに

039:せっかく せっかくの自由な想像力さえもセシウムまみれになってしまった

040:清 とろけそうな熟柿を軍靴が踏みつけて清王朝の歴史が終わる

041:扇 華やかに広がる裳裾、手に扇 レベッカは絵の中で微笑む

042:特 いきいきと特派員の手で描かれるサイゴン、そこに暮らす人々

043:旧 図書館に懐かしい本 旧交をあたためるごとページを開く

044:らくだ すみずみに読後の余韻が沁みてゆくしばらくだれとも話したくない

045:売 村上龍、村上春樹はいうなれば二大メニューの餃子と焼売

046:貨 水蓮や銅貨という名の少年でにぎわう長野まゆみワールド

047:四国 家出した娘が母に書き送る手紙の中の四国まぶしき

048:負 終盤になってようやく明かされるソフィーの背負った重すぎる過去

049:尼 よく見れば「晴美」の名前 尼になる前に書かれた一冊らしい

050:答 どれだけの読者が答えを見つけたのだろう書名の不思議な問いに

051:緯 北欧の緯度の高さを思いつつ白夜にまつわる短編を読む

052:サイト 題名が流行語を生むことがある例えばパラサイトもその一つ

053:腐 ため息を誘う耽美な文体にうっすら腐臭を嗅いだ気がする

054:踵 退屈な大人の世界の常識を踏みつけて立つセシルの踵

055:夫 夫婦でも本の好みは違うから貸したり借りたりほとんどしない

056:リボン 思い詰めやすいヒロインほどけなくなったリボンのように頑な

057:析 短歌的意味を分析するよりもただ感覚で味わえばいい

058:士 飛行士の一人称で語られる王子と出会って別れるまでが

059:税 女性向けエッセイ集の印税でクレヨンハウスを始めたという

060:孔雀 書棚から画集が落ちる 床の上に孔雀が一瞬、羽根を広げた

061:宗 戦争も宗田理が書くような戦争ならば楽しいけれど

062:万年 愛すべき万年青年だと思うブラッドベリの小説の「僕」

063:丁 装丁に惹かれて何度も手に取った国書刊行会のシリーズ

064:裕 裕福な日本はとうに過去となり誰もがたやすく下流に落ちる

065:スロー インガルス一家のことを思い出すスローライフという言葉から

066:缶 クッキーの缶にしまった思い出を慈しむごと作家は語る

067:府 ずっしりと重い白書を提げて出る政府刊行物センターを

068:煌 五十年先の未来を知らぬまま煌めいていた昭和の記憶

069:銅 青銅の魔人と明智の対決に胸躍らせてページをめくる

070:本 新本格ミステリばかり平積みにされて華やぐ書店の一画

071:粉 湯上りの肌にはたいた天花粉 遊び回ったひと日が終わる

072:諸 親愛なる読者諸兄と呼びかけて推理作家が突きつける謎

073:会場 客がみな帰ったあとの会場の椅子にぽつんと文庫が残る

074:唾 もどかしくページをめくる映画なら固唾をのんで見守る場面

075:短 日常の背後にひそんだ本心が見え隠れする短編を読む

076:舎 舎人らを付き従えて大海人皇子が都に攻めのぼりゆく

077:等 読みながら身につまされた自己愛と劣等感は表裏一体

078:ソース ロマンスは波乱に富んでややこしい名前のソースのような味わい

079:筆 その夏は絵筆をペンに持ち替えた画家の受賞が話題を呼んだ

080:標 標準語にはないテンポで進みゆくおかしみのある恋のやりとり

081:付 もう何のために貼ったかわからない黄ばんだページの付箋をはがす

082:佳 ベストセラーにはならずとも小説を読む喜びが佳作にはある

083:憎 憎らしくなるほど夢中で読んでいた年下の女性作家の本を

084:錦 大日本、凸版、錦明 奥付でなじんだ印刷会社の名前

085:化石 たいせつな化石のとなりに気に入りの冒険譚を並べて置いた

086:珠 自分なりの形で出会い手に取ってほしい珠玉の短編がある

087:当 適当に選んだだけの一冊が忘れられない一冊になる

088:炭 タイトルに惹かれて手にした何冊か 炭酸水を好んだ夏に

089:マーク 本を詠む一連なればこの題で思いつくのはマーク・トウィーン

090:山 噴火まで半日 古代ポンペイを舞台にドラマは山場へ向かう

091:略 いずれはと思いながらも子ども向け簡略版しかまだ読んでない

092:徴 「経済的徴兵制」という言葉 身近になったこの夏の間に

093:わざわざ ネットでも頼めるけれど都心までわざわざ出かけて書店を巡る

094:腹 腹の底、こころの底から歌われる祈りのような「喜びの歌」

095:申 買ってきたばかりの本と淹れたての珈琲 申し分のない午後

096:賢 ノーベル賞作家でさえも貶めて賢(さか)しらな顔をするネトウヨは

097:騙 騙し騙し暮らしています近ごろは齋藤史を読み返しつつ

098:独 引っ越しのたび連れてきた十代で読んだ『心は孤独な狩人』

099:聴 街頭の抗議スピーチ 聴衆を前に歌人も声を上げおり

100:願 明らかに右に傾く世の中に書物が縛られないよう願う
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by noma-igarashi | 2015-10-11 20:23 | 題詠100参加作品 | Trackback | Comments(0)
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